クラブニュース

クラブニュース

ラグビーワールドカップ2019の裏側②


前回に引き続き、ラグビー部の久門チームディレクターが帯同したラグビーワールドカップジョージア代表の様子を前回に引き続き第二弾をお伝え致します。チームは事前キャンプ地の徳島県より移動し、9月16日(月)に無事、初戦のウェールズ戦が行われる豊田スタジアムへの拠点となる名古屋市に到着し公式的にラグビーワールドカップ2019が開始されました。


公式にスタートをしたこの名古屋から、私の片腕となるアシスタントリエゾン、そしてTSA(チームセキュリティアドバイザー)2名が仲間に加わり、大会期間中はジョージアチームと行動を共にする事になります。そして通訳はすでに徳島県から帯同してくれていたのですが、この方が日本に唯一5人しか居ないジョージア語を話せる日本人というレアな存在でした。大会期間中は特に英語を話す事が出来ない人が多かった選手と我々の架け橋になってくれました。



練習拠点となるのはトップリーグの試合会場等でおなじみの名古屋ラグビーの中心でもある瑞穂ラグビー場でした。私自身も過去にトップリーグチームに所属した際にはここではよく試合をさせてもらったので動線等も含めて非常に馴染みのあるスタジアムでした。


普段は駐車場として使用されている、正面玄関入り口付近に特設のテントが設置され、その中にウェイトトレーニングの設備が設置されており、ここで選手達のウェイトトレーニングも実施されていました。こちらでも名古屋市の方が大変よく臨機応変に動いて下さり、本当に色々と助けて下さりました。


瑞穂ラグビー場では練習だけではなく、名古屋市のラグビー少年少女達との交流もあり、参加させて頂きました。これはラグビーワールドカップを含むワールドラグビーが主催する各大会では各チームがラグビーの普及に務める事が出来るようにレガシープログラムへの参加を義務付けているからです。私が総務を務めたU20日本代表がウルグアイに遠征し、U20ワールドトロフィーで戦った際にもこのレガシープログラムがあり、選手・スタッフを連れて地元の幼稚園等にラグビーの普及に赴いたのを今でも覚えています。


1人でもラグビーを好きになってもらい、応援してもらったり、実際にプレーしてもらったり仕掛けていくというアクションは既にラグビーに関わって長い私にとっては一つのミッションでもあるので、再びレガシープログラムに参加出来てとても嬉しかったです。小さな事かもしれませんが、それが最終的に束になると、とても大きなものになると信じて普及活動のチャンスがある際にはなるべく引き受けるようにしています。


さらに名古屋市はジョージア代表が公式にワールドカップでの活動を開始する場所という事でオフィシャルウェルカムセレモニーが名古屋市能楽堂で盛大に行われました。名古屋市の名物市長の河村市長、ワールドラグビーのボーモント会長、日本ラグビーフットボール協会の新会長となった森会長、そしてジョージア側からはジョージア駐日大使館よりティムラズ大使も出席されていました。ここで選手・スタッフ達は参加の証としてキャップ(選手のみ)とメダルの授与が行われました。


この式典の中で河村市長は英語でスピーチを行われ、通訳の方は少し戸惑っておられましたが、「Not Tokyo, But Nagoya(東京にはないが名古屋にはあるものがある)」と名フレーズが飛び出て、なぜかそれがジョージアの人達には大ウケしていました。

初戦のウェールズ戦が行われる豊田スタジアムはその名の通り、豊田市にあるフットボール専用のスタジアムでラグビーを観戦するには最高の環境です。普段はJリーグ・名古屋グランパスの試合を中心にラグビー・トップリーグも頻繁に行われるようになってきました。ジョージア代表としては2018年に”予行演習”として日本代表とテストマッチをここで戦ったので既にプレーした事のある馴染みのあるスタジアムという事になります。私も過去にトップリーグのチームに所属をしていたときに何度かこの場所で試合を経験させてもらった事があります。ちなみに天井の屋根に関しては、当初は開閉式としてオープンしたのですが、故障し、その修理にかなりの費用を要するとの事で現在は使用されておらずオープンエア状態で運用されています。なのでもう閉まりません(笑)


ラグビーにおいて選手の心理的状況は非常に重要です。23人の選手がストレス無く、絶対的な自信を持った万全な状況で試合に臨ませなければなりません。スタジアムまでの交通事情、所要時間、スタジアム内での動線、ロッカー内の準備やウォームアップ等も全てが綿密に計算されており、テストマッチにおいてミスは許されません。この日は滞在している名古屋市内から豊田スタジアムまでは約1時間の所要が見込まれた為にスタジアム近くのホテルに移動し、そこで試合前の調整、食事、そしてミーティングを行いスタジアムに向かいました。試合日はさすがな陽気なジョージアン達も戦闘モードに切り替わり張り詰めた空気感になります。スタッフとしての我々の仕事はとにかく準備と計画をした事をスムーズに計画通りに実行する事のみ。問題等が発生した際にも決して「大きな問題」にはせず、騒がず、選手にはなるべく分からない形で処理と対応をします。


ワールドカップの試合日に関しては全てポリスエスコート(警察による誘導)が行われ、安全にチームが乗ったバスがスタジアムに到着するように配慮されていました。ここで裏話として、日本人は普段からあまりポリスエスコートに慣れている国ではないのですが、外国ではスポーツチームに対してポリスエスコートが付くのは一般的です。外国の場合、信号が赤でも扱いは緊急車両と同じなので、警察が先導しコントロールをした上で通過していきます。しかし、日本ではそうは行きません。警察車両であるが故に、それも緊急走行ではないので、信号はきっちりと守る上にスピードも標識通りの走行となるのでやけにスローに感じました。そんな”超安全運転”の中、高速道路上でも他の車にどんどん抜かれて行きあまりにも速度が遅いので逆にチーム(特にヘッドコーチが)がストレスを感じていたという場面が何度がありました。

もちろん事前にチームには「ポリスエスコートはあくまでも安全に対する配慮であって、スピードではない」との説明が成され、さらには私からも事前にヘッドコーチには「多分ストレスを感じるかもしれない」とは伝えてありました。これは私が長年、外国人選手やコーチ達と仕事を共にして来たところから得た感覚・経験でもあったかもしれません。

何がともあれ、無事にチームバスは試合会場である豊田スタジアムに時間通りに到着し、まずは一安心。ここからがいよいよ本番です。特に試合直前のロッカールームは非常に殺伐としており、極限状態に近い人達の集まりに近いです。私はその中でしなければならないタスクを片付けて行くのですが、その中でトラブルも発生したりします。この日はコーチボックスのコーチ達が使用するパソコンへのビデオ入力がうまくいかず、そのトラブル対処で結局、試合中も対応を余儀なくされました。結局、まともに試合を見たのは皆が静止する国歌斉唱の場面と試合終了残り20分位でした。


試合の方は開始2分で先制され、そこからハーフタイムまでに29得点をウェールズに許し、0-29で折り返す。後半は開始直後にモールからトライを決めて7-29とするが、64分に追加点を決められて7-36。69分にチームのムードメーカーでもあるレバン・チラチャバが持ち込み14-36とするが、75分にも失点し、最終的には14-43で敗戦となった。とは言っても相手は今年の6ネーションズのグランドスラムチャンピオンのウェールズだ。負けたものの、普段ティア1のチームと試合をする事が少ない彼らにとっては大きな意味と経験を持つ敗戦となりました。

私も今年3月にウェールズのカーディフ(カーディフブルーズを視察)を訪れ、その際にウェールズとアイルランドのグランドスラム決定戦を生で観戦させてもらったが、一人一人の選手の経験値やラグビーに対する理解力がすごいかった。ジョージアはパワーは世界屈指であり、ポテンシャルもどこの国よりも持っているが、経験値や細かい部分に対するアプローチ関してはまだまだ時間を掛けて成長を遂げる必要があると感じました。


マネージメントのお仕事としては試合が終わってからも続きます。試合後は片付けを素早く行い、記者会見やインタビュー等が無事に終了したのを見計らってバスで試合会場を後にします。宿舎に到着するともう23時は越えていましたが、片付けを終えた日本人スタッフのメンバーから集まって1試合目お疲れ様会を実施しました。こちらの宿舎は2018年のテストマッチにもお世話になった同じ宿舎で、担当者の方も同じという事で色々と無理なリクエストも聞いて頂く、嫌な顔一つせずに対応をして頂き、本当に感謝しています。


マネージメントの立場としてはチームに関わる様々なステークホルダーの方々も大事なチームの協力者であり、彼らの協力なしにはチームがスムーズに活動をする事は出来ません。彼らとの関係性はチームが活動する上では欠かせないもので、嫌われるような事は間違ってもあってはなりません。もちろん担当される方によっては気難しかったり、こちらが望むような協力が得られなかったりもしますが、最終的にはチームの人間として活動するに際しては自分自身の態度や姿勢が”チームの価値に影響する”と思って行動する必要があると考えています。なので最終的に去った後に「”ジョージアの久門”は最悪だったなぁ」と言われないように周りの方に対する配慮や気遣いも必要だと思っています。

そりゃもちろんこの仕事をしていれば腹が立つ事も山程ありますが、基本的には「Do my best, Do my job」が基本スタンスで頑張るしかありません。