スポーツ局特集コラム

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【コラム】7連覇、そして次なる高みを目指して 〜ハンドボール部(女子)、インカレ7連覇への挑戦

インカレ7連覇を達成したハンドボール部(女子)

のしかかる、連覇の重圧

昨年、日本体育大学が持っていたインカレ連続優勝記録の5連覇を44年ぶりに塗り替える6連覇を達成したハンドボール部(女子)。2013年から続く学生との公式対戦連勝記録も伸ばし続け、もはや学生女子ハンドボール界では「向かうところ敵なし」の存在として、大学スポーツ界から注目されています。

試合前に楠本監督から指示を受ける

名将・楠本繁生監督のもと、インカレ制覇を積み重ねてきた

「連覇といっても、選手は毎年入れ替わる。今年はまた新しいチームとしての挑戦です」とチームを率いる楠本繁生監督は語ります。しかし、熊本で開催の「2019女子ハンドボール世界選手権大会」日本代表チームの約1/3を占め、今や『おりひめJAPAN』の中核を担う歴代の先輩たちから受け継いだ「インカレ連覇」という偉大な功績は、現チームメンバーの肩に重くのし掛かっていたに違いありません。

 その重圧を跳ね除けようと毎日の厳しい練習に耐え、少しずつ自信を積み重ねて臨んだ、高松宮記念杯第55回全日本学生ハンドボール選手権大会。

「大会前日に楠本先生から『6連覇というのは、あくまで先輩たちが作り上げた結果に過ぎない。それにとらわれず、自分たちの戦いに集中すれば良い』と言ってもらい、気持ちが楽になりました」とキャプテンの秋山静香が話すように、セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ21・宮城県宮城郡利府町)のコートには、少しリラックスした表情をした選手たちの姿がありました。

王者の貫禄を示す快進撃

初戦の相手は早稲田大学。前半3分40秒に中山佳穂のシュートが決まると、そこから約2分間で立て続けに3点を挙げ、試合の主導権を握ります。前半を21-6の大差で折り返すと後半も攻守の手を緩めず、40-13と相手を圧倒しました。

 2回戦は関西学生ハンドボールリーグでしのぎを削る関西大学。ここでも大体大は王者の力を見せつけます。前半だけで4点を挙げた秋山、ともに5度ネットを揺らした橋本憂香、松倉みのりの“4年生トリオ”がチームを牽引し、35-18と快勝しました。

 準々決勝は関東の強豪・日本体育大学。大体大はこれまでの2試合同様、試合開始直後から快調に得点を積み重ねていきます。「大会直前まではディフェンスがうまく機能していない印象があり、乗り切れるかどうか不安だった。でも試合を重ねるごとに自信と精神的な余裕を感じることができた」と2年生の尾辻素乃子が振り返るように、前半開始9分まで相手を無得点に封じ込める鉄壁の守りを見せつけます。後半は2名の退場者を出したこともあり、相手に攻め込まれる場面もありましたが、終わってみれば33-18と危なげない試合となりました。

攻守に活躍を見せた、尾辻素乃子

攻守に活躍を見せた、尾辻素乃子

インカレ7連覇まであと2勝と迫った準決勝・東海大学戦。この試合からアリーナに設けられた観客席からは、両校の賑やかな応援合戦が展開します。ここでひときわ輝いたのは、3年生の中山でした。相手ディフェンの上から放つ、華麗なジャンプシュートを武器に、前半から得点を積み重ねます。「今大会は持ち味であるロングシュートを左右に打ち分ける精度が悪かった」と自己評価は低めでしたが、両チーム最多の8点を挙げて「学生唯一の世界選手権日本代表選手」の実力を遺憾なく発揮。33-19で相手を退け、順当に決勝へと駒を進めるチームの原動力となりました。

相手ディフェンの上から華麗なジャンプシュートを放つ、中山佳穂

相手ディフェンの上から華麗なジャンプシュートを放つ中山佳穂

7連覇達成!歓喜の胴上げ

決勝の相手は筑波大学。昨年準優勝の東京女子体育大学を準決勝で下し、勝ち上がってきた実力校です。

 「今年は決して爆発力のあるチームではなかった。7連覇の重圧もあり、全員でもがき苦しんだ一年だったと思う。でも選手たちは1戦1戦経験を重ねるごとにチームとしてのまとまりを強め、トータルの力で相手を上回る成長を見せてくれた」と楠本監督が目を細めるように、苦しい1年を共にくぐり抜けた仲間を信じ、平常心で決勝の舞台に立つメンバーの表情には自信がみなぎっています。

決勝の試合前でも、いつも通りリラックスした表情を見せる選手たち

決勝の試合前でも、いつも通りリラックスした表情を見せる選手たち

この試合でも大体大は、序盤から早い攻めと堅い守りで相手を圧倒します。開始2分間で3点を挙げると、7分から12分過ぎまでの5分間は6連続ポイントを叩き出す一方的な展開に。前半を19-9で折り返します。後半に入っても相手に流れを与えず、尾辻、相澤菜月、中山、吉留有紀という来年度もチームを引っ張る2年生、3年生が得点します。

力強いフォームからジャンプシュートを放つ相澤菜月

力強いフォームからジャンプシュートを放つ相澤菜月

応援席からのカウンドダウンが始まった試合終了直前には、4年生の橋本が締めくくりのシュートを決めて、チームのムードは最高潮に。最終的には32-19と、全試合30点以上、20失点以下という最高の結果で、前人未到インカレ7連覇を達成しました。

 熱戦を制したメンバーと、試合終了と同時にコートに飛び出してきた全部員による楠本監督の胴上げが始まります。先輩たちからバトンを受けた学生日本一の座を守り抜き、プレッシャーから解き放たれた選手たちの笑顔が弾ける瞬間でした。

歓喜の笑顔とともに宙に舞う、楠本監督

歓喜の笑顔とともに宙に舞う楠本監督

次なる目標は日本選手権、そして8連覇へ

歓喜に沸く試合終了直後のアリーナで、選手たちに喜びの胸の内を聞きました。

 ■秋山静香(キャプテン/4年)
「インカレ7連覇を目標に頑張ってきた努力が報われて嬉しい。これで学生の試合は終わり。すぐに気持ちを切り替えて、日本選手権の決勝進出を目指し、1からチームを作り直したい」

 ■相澤菜月(3年)
「7連覇を達成できてホッとしている。下河内先生の指導のもと、地道にトレーニングに取り組んできたことも自分の大きな自信となった。来年は今年試合に出ていたメンバーが多く残るが、また新たなチームとしてスタートする。周りから見られても恥ずかしくないような、人間性の高いチームに成長していきたい」

 ■中山佳穂(3年)
「7連覇にはホッとしているが、4回生となる来年が勝負と思っている。なかなか試合に出ることができない部員も含めて、全員が大切な存在であること、同じ目標を見据えて取り組んでいくことの大切さを後輩たちに伝えていきたい。誰が試合に出ても崩れない、強いチームを作っていきたい」

 ■尾辻素乃子(2年)
「楠本先生に求められていることはわかっていたものの、それがなかなかできず、精神的につらい1年だった。来年は練習以外の生活面も含めてもう一度自分を見直し、8連覇に向けて頑張っていきたい」

 選手たちは連覇の重圧から解放された安堵感口にするものの、すぐに年末・広島県で開催される「ハンドボール日本選手権」や、来年のインカレへ向けた抱負に話を移します。絶対王者として7年間、大学ハンドボール界のトップに君臨するチームのモチベーションや覚悟の高さを垣間見たインタビューとなりました。

7連覇記念Tシャツを着て、満面の笑み

7連覇記念Tシャツを着て、満面の笑み

「日本選手権までにそれぞれの課題を明確にして、それを結果に結びつけるよう、いかにトレーニングに盛り込んでいくかを練るのが私の責任。昨年達成できなかったベスト4の壁を超え、決勝のベンチで指導すること目指してまた頑張っていきます」と語る名将・楠本監督の視線も、すでに次の目標をしっかりと見据えていました。

楠本監督が優秀監督賞を、榎和奏、相澤菜月、秋山静香、尾辻素乃子、中山佳穗が優秀選手賞を受賞

楠本監督が優秀監督賞を、榎和奏、相澤菜月、秋山静香、尾辻素乃子、中山佳穗が優秀選手賞を受賞

激闘!日本選手権——そして次なる挑戦へ

インカレ7連覇を達成したハンドボール部(女子)は、20191224日(火)から28日(土)まで広島県で開催された「第71回日本選手権大会」に学生王者として出場。これまで幾多の先輩たちが挑むも到達できなかった決勝の舞台を目指し、新たな戦いに挑みました。

 初戦(2回戦)のHC名古屋戦は、相澤、中山の3年生コンビが7得点ずつを叩き出す活躍もあり31-17で勝ち上がると、続く準々決勝では社会人の強豪・オムロンと激突。大体大は世界選手権日本代表メンバー4人を擁する相手にも臆することなく、前半を16-9で折り返します。後半は社会人の意地を見せるオムロンに同点に追いつかれるも、26分、27分と相澤が連続ポイントを決め再度突き放し、25-23で勝利。大金星をあげました。

完全に勢いに乗った大体大は、準決勝・飛騨高山ブラックブルズ岐阜戦も33-26と危なげない戦いを見せ、ついにベスト4の壁を突破。夢の日本選手権決勝へと駒を進めました。

 決勝の相手は、社会人王者の北國銀行。2019-2020シーズンに東全日本社会人選手権と国体を制し、今大会で3冠を狙う絶対王者です。大体大ハンドボール部OGも多数在籍していることから、インカレ連覇の偉業を築いてきた先輩たちが、後輩たちの快挙達成の前に立ちはだかる格好となりました。

 大体大はこの試合でもスピードあるパス回しから多彩な攻撃をみせますが、相手ゴールキーパー・馬場敦子選手(大体大OG)の好セーブに再三阻まれ、なかなか得点を重ねることができません。前半は11-15とリードされる展開になります。後半も序盤は着実に点を重ねる相手に突き放されかけますが必死に食らいつき、5、6点差のまま時間が流れます。

ところが、12分過ぎに楠本監督が取ったタイムアウトから流れが一変。中山の速攻を皮切りに、松倉、吉留、秋山が得点を決めて、社会人王者に1点差まで詰め寄ります。しかし最後は、OGの大山真奈選手に得点を決められ万事休す。後半だけをみると16-14でリードするも、27-29の惜敗となりました。

 試合後、コート上で涙を見せる選手たち、そして楠本監督。日本選手権でこれまで最高の準優勝という輝かしい結果を残しましたが、頂点には一歩及ばず、悔しさを隠しきれません。大阪体育大学ハンドボール部(女子)の挑戦は、次の年代の選手たちへと託されました。